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『ラストサムライ森屋翼』という漢の生き様

「最後の侍」という言葉が、これほど似合う男がいるだろうか。ラストサムライ森屋翼。彼を知る人間なら、この呼び名に違和感を覚える者はいない。

派手に自分を語ることはない。だが、同じ空間で卓球に向き合えば、その存在感は否応なく伝わってくる。言葉ではなく、姿勢で示す。森屋翼という漢は、そうやって周囲に影響を与え続けてきた。


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遅すぎるスタート、それでも逃げなかった


森屋翼が卓球を始めたのは、中学1年の中頃。決して早いスタートではなかった。

それまではサッカーをしており、ポジションはゴールキーパー。なぜ卓球に転身したのかと聞くと、彼はこう答える。「守るより、攻めに徹したかった」。

卓球という競技で全国を目指すには、やや遅いスタートだった。それでも彼は、その事実を言い訳にすることはなかった。

持ち前の精神力。現代ではやや古臭く感じられるかもしれないが、気合い、根性、反骨心。そうした部分を武器に、名だたる選手たちを真正面から倒してきた。

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時代に逆行したペンホルダーという選択


彼が選んだラケットは、ペンホルダーだった。当時の時代の流れとは、明らかに逆行する選択である。

チキータや台上バックドライブが台頭し、シェークハンドが主流となっていく時代。より合理的で効率の良いプレーが求められる中、ペンホルダーを使い続ける選手は年々減っていった。

それでも森屋翼は、ペンホルダーを変えることはなかった。

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弱点から逃げず、弱点を武器にした


ペンホルダーの弱点はバック側。それは周知の事実であり、誰もが彼のバック側を狙ってくる。

だからこそ森屋翼は、そこから逃げなかった。回り込みの速さ、ショートの精度。相手が狙ってくる場所を、徹底的に鍛え上げた。

周囲が口を揃えて「弱点だ」と言う部分を、言い訳にせず、黙々と埋め続けた。

その積み重ねが実を結び、中学生にして関東大会、全国中学生大会へと駒を進める。

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勝つ側になるための進学


その後、森屋翼は神奈川2位の三浦学苑高校へと進学する。神奈川1位の湘南工科大学附属高校という選択肢もあった。

それでも彼は、あえてそちらを選ばなかった。理由は単純だ。「湘南工大を倒したかったから」。

安全な道ではなく、勝つ側になるための場所を選んだ。

高校でも鍛錬は止まらない。練習、トレーニング、食事管理。卓球以外から卓球に活かせるものを貪欲に取り入れた。

その結果、関東大会2位、国体代表、東京選手権ジュニア16という成績を残す。

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名門・埼玉工業大学という現実


高校卒業後、森屋翼は名門・埼玉工業大学へ進学する。なりもの入りでの入学だったが、現実は甘くなかった。

全国から集まる強豪選手たち。野田学園、尚志学園、実践学園。上級生には愛工大名電出身、中国からの留学生。一年経てば、さらに実力ある下級生が入ってくる。

一度崩れれば、元の位置には戻れない世界。

それでも彼は踏みとどまり、全日本学生選手権出場、リーグ戦メンバー、インカレ8位、関東学生32の活躍と、確かな結果を残した。

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リーグ戦・法政大学戦という一戦


リーグ戦、法政大学戦。スコアは3対3。ラスト7番にコールされた名前は、森屋翼だった。

守護神として、チームの命運は彼一人に託された。リーグ戦特有の空気、熱気。その緊張感は、耐え難いものだった。

試合はフルゲーム、2対2。作戦は出し尽くし、迎えた10対10。

その場面で彼が選んだのは、派手な一撃ではない。これまで鍛え続けてきた、地味なプレーだった。

試合は3-2で勝利。彼はガッツポーズをし、涙を流した。

積み上げてきたすべてが、そこにあった。


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現在、そして止まらぬ進化


大学卒業後、森屋翼はシェークハンズ、リトルキングスでコーチを務め、現在はアマテラス卓球場の店長として現場に立っている。

立場が変わっても、姿勢は変わらない。

先日行われた東京選手権・神奈川予選では、幾度もフルゲームの厳しい試合を勝ち抜き、代表権を獲得した。

神奈川県予選は、全国大会の2回戦・3回戦にも匹敵すると言われる。その中を通過するのは至難の業だ。

それでも彼は、勝ち切った。

両刃の剣を選ばず、あえて片刃の刀を手に取り、日々鍛錬に励む。

その姿は、まさにラストサムライ森屋翼そのものである。

 
 
 

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